【被災地からのコラム】「ふたば未来学園高校」が開校-福島県広野町 朝日新聞いわき支局・岡本進

建学の精神は「社会を変革する変革者たれ」です。さまざまな思いを胸に集まった新1年生152人は、地域復興の将来の担い手に期待されています。
東京電力福島第一原発の事故で被災した福島県双葉郡内の広野町に4月8日、新しい高校「ふたば未来学園」が開校しました。「未来」という文字は、福島県の公募で集まった案の中から、避難している子どもたちが選びました。
双葉郡は、多くの場所でいまも住むことができないため、18歳未満の子どもたち1万人が避難を続けています。「つらい経験を乗り越え、それぞれの夢をかなえてもらいたい」。そんな願いから、この学校はつくられました。
新しい校舎はこれから建設されるため、地元の中学校を改修した校舎です。人気アイドルのAKB48の衣装担当者がデザインした、真新しいブレザーの制服に身を包んだ1年生152人が入学しました。
新潟県などに家族で避難した経験がある日下(くさか)雄太さん(15)が、生徒を代表し、あいさつしました。「誇らしさ、うれしさとともに、1期生としての責任を背負うことに、緊張を感じています。ここにいる新入生の多くが避難を余儀なくされました。あれから4年。1人1人がさまざまな思いを胸に、この地へやって来ました」
丹野純一校長は「私たちは私たちの手で社会を変えることができる。『自らを変革し、地域を変革し、社会を変革する変革者たれ』。この言葉を、この学校の建学の精神として刻みたい」と力強く訴えました。
詩人の谷川俊太郎さんが作詞した校歌がしゃれています。1番の歌詞は、こう。「学ぶ覚える身につける 腑(ふ)に落ちるまで考える 深くて広い心と体 未来に向かうこの自分 すこやかにしなやかに」
校歌を作曲したクリエイターの箭内道彦さんが、こんなことを言っています。「福島の若い人たちは、重荷を背負い過ぎていて僕は時々心配になります。故郷の役に立ちたいと思い過ぎている子、復興の期待を大人達からかけられ過ぎている子。もちろん尊いことですが、本当はもっとふつうに恋したり、喧嘩(けんか)したり、ふざけたり、してほしい」
私も、そう思います。まだまだ重苦しい空気に包まれている福島で、新しい学校の開校は「復興のシンボル」とされ、開校式には多くの政治家たちも参加しました。「地域の復興の将来の担い手を育てたい」。学校を作ったのには、そんな理由もあります。
でも、原発事故のときは、みんな小学5年生の子どもたちです。これまで、たくさんのつらい思いをしてきたし、きっと、いまもそう。家族が学校から離れた場所に避難しているため、学校の寮に入らざるを得ない生徒は67人もいます。ふつうの高校生でいい。3年間、楽しむことだけを考えて欲しいと思います。
朝日新聞いわき支局 岡本進
【写真説明】
式典後の新入生主催のレセプションで、実行委員として会場を盛り上げる遠藤諒夏さん