【被災地からのコラム】子どもの思いがつまった児童館 朝日新聞仙台総局・中林加南子

地元のまちづくりにかかわり続けている子どもたちがいます。宮城県石巻市で昨年1月オープンした児童館では、子どもたちが運営にかかわり、やりたいイベントも自分たちで企画します。復興のこと、まちづくりのことを、おとなと一緒に考えて取り組む。子どもたちは「まちの好きなところがたくさん見つかった」と話します。
被災地ではよく、子どもの意見を復興に生かそうという声を聞きます。ですが、実際に形になっている例は、そんなに多くはありません。
そんななか、地元のまちづくりにかかわり続けている子どもたちがいます。その子たちが活動を発表する「第6回まちづくりサミット」が、仙台市で5月に開かれました。
会場のホールに入るとまず、子どもたちの明るさに圧倒されました。200人ほどの参加者の半分近くが小中高生です。大阪から話を聞きに来た中学生もいました。司会も子どもが務めます。
発表したのは、宮城県石巻市、岩手県陸前高田市、山田町の「子どもまちづくりクラブ」のメンバーです。2011年の夏から、思いを形にするべくそれぞれの地域で活動しています。
石巻の中心部には昨年1月、子どもたちの「遊び場がほしい」という意見を聞いて、児童館「子どもセンター『らいつ』」がオープンしました。子どもたちが放課後、遊びや勉強にやってきます。料理教室や野菜作りといったイベントもよく開かれます。小さな子の親が集まる場にもなり、1年間で3万人以上が利用しました。
らいつのユニークなところは、日頃の運営にも子どもがかかわるところです。やりたいイベントがあれば自分で企画します。育てる野菜も、みんなにアンケートをして決めます。おとなのスタッフが大事にしているのは、「意見を聞いたら、子どもたちと一緒に実現するよう取り組むこと。実現が難しいときは、その理由をきちんと伝えること」。
だから子どもたちは、安心して考えを言うことができます。高校生の女子生徒は「これまでは、『変なことを言ったら怒られるんじゃないか』と思って何も言えなかったけど、ここでは何でも言えます」と話してくれました。
陸前高田のグループは、市が新しく作る図書館に自分たちの思いを生かしてもらおうと活動しています。山田のメンバーも、子どもの交流センターの建設に向け、アイデアを出しています。
復興のこと、まちのこと。おとなと一緒に話したいと考えている子どもはたくさんいます。
活動を支援する国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の担当者は「おとなに意見を言い、実現できることは、子どもにとって被災体験からの回復にもつながります。震災の話はタブーになりがちですが、学校や家庭でも復興にかかわる機会を作ることが大事です」と話します。
おとなだけで決めるより、遠回りになるかもしれません。でも、「まちの好きなところがたくさん見つかった」と話す子どもをみると、間違いなく復興の力になると感じます。