【被災地からのコラム】「仙台育英」甲子園準優勝 主力選手から力もらった後輩中学生の誓い 朝日新聞仙台総局・桑原紀彦

震災の被害を受けた宮城県七ケ浜町のリトルシニアチームの中学3年、和泉龍樹君(14)は、仙台育英の決勝戦を特別な思いで見守りました。津波で自宅が流されましたが、同じシニアの先輩、平沢大河選手(3年)に憧れ、野球に打ち込むことで前を向くことができたのでした。決勝で敗れた仙台育英ナインを見て、和泉君は新たな目標を誓いました。

この夏の甲子園で、宮城県代表の仙台育英が東北勢初の全国制覇に挑みましたが、惜しくも準優勝に終わりました。中軸の平沢大河選手(3年)は、震災の被害を受けた七ケ浜町にあるリトルシニアチームの出身です。後輩の中学3年生、和泉龍樹君(14)は決勝戦を特別な思いで見守りました。津波で自宅が流されましたが、平沢選手に憧れ、野球に打ち込むことで前を向けた、といいます。

8月20日午後1時、町内の公民館に中学生チーム「リトルシニア七ケ浜」の選手ら約20人が集まり、テレビで仙台育英ナインに声援を送りました。「平沢 ラブ」と顔にペイントする子も。平沢選手は3回裏、チャンスを広げる二塁打を放ちます。和泉君は「とってもかっこいいです」と笑顔を見せました。

自宅は、海から約50メートル。震災発生時は小学4年生で、通っていた学校で一晩を過ごしました。翌日、家に行くと建物が土台ごとなくなっていました。玄関に置いていたバットもグラブも流されました。「もう野球はできない」と思うと、涙が出たといいます。

七ケ浜町は町内の約4割が浸水し、総監督の星伸一さん(54)によると、リトルシニア七ケ浜でも4人の選手が、家が流されるなどの被害を受けました。練習を中断せざるを得ませんでしたが、再開を求める保護者の強い要望があり、約1カ月後にはグラウンドに子どもたちが戻りました。

和泉君が当時いた小学生のチームも、夏ごろには練習を始めました。自分もやりたい。でも、一家が仮設住宅に暮らすなかで、とても言い出せない。迷った末、お母さんにおそるおそる「野球やっていい?」と聞くと、「行ってきなさい」と快く送り出してくれました。グラブやスパイクを貸してくれた仲間たちに、「また涙が出ました」。

リトルシニア七ケ浜は当時中学2年の平沢選手の活躍もあり、2011年8月に神宮球場であった全国大会に進みました。お兄さんがレギュラーだった和泉君は、スタンドから平沢選手を見ました。華麗なボールさばきと、鋭い打球を放つ姿は輝いていました。「いつか、自分も」と心に決めました。平沢選手が1日1千回素振りしていると聞き、これまでの倍の数、バットを振りました。

中学3年生になり、4番を任されるようになりましたが、最後の大会では地方予選で敗れ平沢選手のように全国大会には進めませんでした。しかし、決勝戦で敗れた仙台育英ナインを見て新たな目標ができたといいます。

それは、東北勢初の甲子園優勝。「大優勝旗を持って帰る」と力強く誓いました。和泉君のような被災した子どもたちが、逆境をはね返し全国の頂に立つ――。その日を心待ちに、私もここで取材と球児の応援を続けていきます。


▽写真説明
仙台育英の応援で盛り上がる和泉龍樹君(前列右)らリトルシニア七ケ浜の選手=8月20日、宮城県七ケ浜町、福留庸友撮影

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