実情は伝えたい、でも心の傷は避けたい。被災地の防災学習で続く苦悩 朝日新聞釜石支局・山浦正敬

東日本大震災で、岩手県内の幼稚園や小中高校などに通う105人の命が奪われました。ただ、先生らと一緒に逃げた子供らはほとんど助かりました。「てんでんこ」を中心に訓練してきた成果とされます。被災地で今も、「犠牲ゼロ」を目指して防災学習が続きます。

釜石市立鵜住居小学校の4年生19人が6月、釜石港で小さな船に乗り込みました。岸壁を離れて向かったのは、湾口防波堤の再建工事現場です。すぐそばの入り江に建てた「専用工場」で巨大なコンクリート壁を組み立ててから、現場に運んで設置します。震災から5年半近くで、ほぼ完成しつつあります。

名前の通り、釜石湾の入り口をふさぐように伸びる防波堤です。津波や高潮から港や釜石の市街地を守ります。海底から海面までの高さは最大で63㍍。世界で最も深い海に設置された防波堤として、震災前からギネス記録を持っていました。

世界に誇る巨大な防波堤も震災の津波には勝てませんでした。総延長約2キロの壁の7割が倒れてしまいました。約30年、約1200億円かけて造ったのに、完成してからわずか3年で壊れしまったのです。

それでも国は試算の結果、津波の勢いをおさえ、釜石の人たちが逃げる時間を6分かせげたうえ、津波が地上をさかのぼる高さを半減できたと再建を決めました。その工事現場を、命の大切さを学ぶ授業の一環として、児童たちは訪れました。そして、案内役の国土交通省の職員に質問しました。

「何日でできるのですか」「どうして造ろうと思ったのですか」

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写真説明:湾口防波堤を造る「専用工場」を船から見学する児童たち=釜石市の釜石湾

「震災で壊れた防潮堤は30年かけて造りました。でも今回は7年で造り直します」「港の中の波を弱くするのと、まちの津波の被害から守るためです」

川口颯斗(はやと)君(10)と久保歩睦(あゆむ)君(10)は防災のために海で作業する人たちがいることに感激しました。「大きさに驚いた」「将来、自分も造ってみたい」とテレビや新聞の記者のインタビューに答えました

児童たちの通う鵜住居小学校は津波で全壊しました。津波で持ち上げられた乗用車が校舎3階のベランダに突き刺さりました。学校にいた子供たちは訓練通りに逃げて無事でした。でも、自宅に戻って犠牲になった子もいます。さらに、地区にある市の「防災センター」に逃げ込んだ住民ら約200人も犠牲になりました。建物に「防災」という名称がついていますが、実は津波の避難場所ではありませんでした。だが、地区の訓練で避難先として代用していたため、多くの住民が勘違いして建物内に逃げ込み、そのまま津波にのまれてしまいました。

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写真説明:見学を終えて港に戻ってきた児童たち=釜石市の釜石港

今も仮設のプレハブ校舎で勉強を続ける児童たちは、県内のほかの学校と同様に、震災の月命日を中心に命の大切さを学び続けています。今回の湾口防波堤見学もその一環でした。取材で同行した報道陣に、事前に学校からの「お願い」が伝えられました。

「津波のことは質問しないで下さい」

子供が実は津波でつらい体験をしているかもしれません。あれだけの被害が出た地区に住んでいます。家族や親しい人が亡くなって、今も精神的なショックを引きずっているかもしれません。先生たちは、幼い心へ配慮しながら、何とか防災意識を育てようと努めているのです。それは、鵜住居小学校だけではありません。

被災地から遠い花巻市の湯本中学校の2年生56人が7月、命を考える学習の一環で、県内の被災地をめぐりました。陸前高田市の「奇跡の一本松」を見て、大槌町の旧役場庁舎前で、犠牲者の遺族から話を聞きました。ともに壊滅的な被害を受けた場所です。

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写真説明:被災地や避難所となった学校の様子を写真を見ながら話を聞く生徒たち=岩手県山田町

松原の中で津波に耐えて一本だけ残った松は、保存処理をしたうえ、後世に震災を伝えるために残しています。大槌町は旧庁舎前で、町長を含む多くの職員らが命を落としました。そのぼろぼろになった庁舎を残すかどうか、町を2分して議論が続いています。

そんな被災地の当時と今を、避難所にもなった小学校の元校長が自ら撮影した写真を使って解説する機会がありました。元校長は冒頭、生徒たちに語りかけました。

「気持ち悪くなった人は部屋の外に出ていいよ。見たくない人もどうぞ」

震災を受けて東北地方に来た私自身も津波に遭ったわけではありません。でも、震災報道に携わってから1年近くたった時でした。警察が上空から撮影した津波の映像を公開しました。見ていると急に胸が痛くなり、どうきが激しくなりました。被災地から遠くに住む子たちだって、津波被害を記録した映像を見たらどういう反応をするかはわかりません。それを元校長は心配して、冒頭に声をかけたのでした。

デジカメで撮影した写真と解説は、1時間近くありましたが、誰も席を立ちませんでした。瀬川諒さん(13)と菅原響子さん(14)、藤原成美さん(13)は小学校の修学旅行でも被災地を回りました。久しぶりの訪問で、復興ぶりに驚きました。被災したビルの高所に記された「津波到達ライン」や海岸にそびえるように立つ新しい防潮堤の高さから、あらためて津波の恐ろしさを感じたようです。

次世代に津波被害の実情と教訓を伝えなければなりません。でも、生々しい被害を細かく知らせたら、子供たちは心の傷を負うのではないか、と先生らは心配します。そのバランスをどうとればいいか、の苦悩が続きます。


ヘッダー写真説明:宿泊先の研修施設で生徒たちはガラス片を使ってロウソクたてを制作した。震災時は停電が続き、ロウソクの明かりが貴重だった=岩手県山田町

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