【被災地からのコラム】やっと完成した「大槌学園」新校舎 脈々と続く教育支援 朝日新聞大槌駐在・星乃勇介

津波で壊滅した岩手県大槌町で、これまでプレハブの仮校舎だった町立大槌学園の新校舎がやっと完成し、9月から子どもたちが通い始めました。
仮校舎は2011年9月、被災した町内の大槌、大槌北、安渡、赤浜の4小学校と大槌中学校の合同校舎として、町内陸部に完成しました。4小学校はその後大槌小学校に統合され、2015年4月から小中一貫の大槌学園に衣替えしました。現在は県内唯一の「義務教育学校」として運営されています。
写真説明:校舎を掃除する子どもたち
仮設であっても名残惜しい学びやです。最後の日、子どもたちは廊下や教室を念入りに掃除して、別れを告げました。
新しい大槌学園の校舎は、仮校舎から東に約2㌔離れた、標高約30メートルの高台にあります。子どもたちは、真新しい木の香りが漂う教室や体育館に歓声を上げ、これからの学園生活への抱負を口々に語りました。
木造と鉄筋コンクリート造りの2階建て、延べ床面積は校舎8874平方㍍、体育館3601平方㍍。総工費は約56億円。約8割が町産材で、小中一貫教育に対応した開放感あふれる造りになっています。
写真説明:新校舎の図書室
初日は体育館で学園集会が開かれ、大森厚志学園長が「日本有数の立派な校舎。建物とともに、自分たちも町のシンボルになれるよう生活しましょう」とあいさつしました。6年生の佐々木蒼衣さん(11)は「仮設校舎の体育館は狭くて人によくぶつかりました。これからは、広い体育館で思い切り鬼ごっこしたいです」と笑顔で話してくれました。
その新校舎で11月、お茶の水女子大(東京都)が、6年生66人に理科の「てこ」の授業をしました。重さのバランスを取りながらぶら下げる装飾品の「モビール」を作るもので、同大サイエンス&エデュケーションセンターの貞光千春・特任准教授(41)が、学園側の教員と連携して教えました。
写真説明:大学との連携授業で笑顔の児童
子どもたちはストローやアクセサリーといった身の回りの素材を使い、電子はかりを駆使してモビールを作りました。計算通り、釣り合いの取れた作品を作れた子もいれば、どうしても傾いてしまう子も。堀合蓮人君(12)は「初めて作りましたが、意外と簡単でした。楽しい授業を贈ってくれて感謝しています」と話していました。
電子はかりはお茶の水女子大の同窓会東京支部のプレゼントです。募金を集め、顕微鏡や実験器具の乾燥機などとともに、約130万円分の学用品を学園に届けました。
教育活動への支援が脈々と続いています。
ヘッダー写真説明:新校舎に登校する子どもたち