【被災地からのコラム】帰村に揺れる家族を描く 福島・飯舘村の中学生が創作劇 朝日新聞福島総局・伊沢健司

原発事故による避難指示の大部分が3月末に解除される福島県飯舘村の飯舘中学の生徒が昨年12月18日、避難先の福島市の仮設校舎で創作劇を上演しました。描いたのは、帰村に向けて揺れ動く家族の心情と、自分たちにできることは何かということ。そして、気づきました。たった一人ががんばることから変化が始まるということに。


家族5人の物語です。飯舘村から避難する小学生の女の子、父母、祖父母が同居。「正直悩んでいるんだ。まだ決められねぇ」。ちゃぶ台を囲む一家だんらんの場面で、祖父が帰村に対する葛藤を口にします。

福島市内の小学校に通う孫の成長を見続けたい。でも、敬老会の仲間と話すと村に戻りたい思いも頭をもたげます。「おれ一人で戻っても……」。若者こそが戻って村を復興してほしい。それでも悩みに抜いた末に、祖父母だけで帰ることを決めます。「年寄りにだってできることはあるはずだ。今の飯舘村をこれ以上、悪くしないようにすることはおれにだってできるんじゃねえのか」

演劇は、学年を越えて取り組む授業「ふるさと学習」で生徒がつくりあげました。仮設住宅や、避難先で農業を再開した村民を訪ね、帰村への悩みを聞き取り、脚本に盛り込みました。

父親役で出演した3年の安斎和訓(かずのり)さん(15)は「戻る人、戻らない人の話を聞き、演劇を通して村の復興を考えられた」。そして、一つの考えにたどり着きました。「中学生一人ひとりの思いは小さいかもしれない。でも自分たちにもできることがあるはず」

劇では、帰還した祖父母が農業を再開する姿に勇気づけられた村民が、少しずつ帰ってきます。小学校を卒業した孫娘の家族も。祖父が孫娘に語りかけます。「いい村だべ。きょうからみんなまた一緒に暮らせるな」

最後に出演した16人が並び、「10年後の飯舘村」を語りました。「たくさんの自然と緑が輝く村」「子どもたちの笑顔が輝く村」。一人ひとりの思いが合わされば、大きな力になることを信じて。

飯舘中の生徒と議論する岐阜県各務原市立中央中学の生徒=福島市飯野町.JPG
写真説明:飯舘中の生徒と議論する岐阜県各務原市立中央中学の生徒=福島市飯野町

ふるさと学習の発表会には特別ゲストも招かれました。岐阜県各務原市立中央中学の生徒4人です。中央中は2012年、原発事故で避難した飯舘中にパソコンを贈って以来、生徒が互いに訪問するなどの交流を続けています。

中央中の4人は飯舘中の生徒とともに「お金」「人」「気持ち」のうち、復興には何が最も大切か討論。中央中3年の島崎捷(すぐる)さん(15)は「気持ち」を挙げました。

「お金も人も必要だけど、村を支えたいという心が大切だと思う。心がなければ何も始まらない」

「お金」「人」「気持ち」のうち、飯舘村の復興には何が最も大切か討論する生徒=福島市飯野町.JPG
写真説明:「お金」「人」「気持ち」のうち、飯舘村の復興には何が最も大切か討論する生徒=福島市飯野町


発表会の前日、飯舘村を訪れて見た光景が頭から離れないといいます。除染や建物の建設など復興が着実に進んでいる一方、除染で出た廃棄物を詰めたフレコンバッグの山に怖さも感じたそうです。

原発事故からまもなく6年。飯舘中の生徒が校長先生も交えて激論する姿を見て、岐阜に帰って周囲に伝えたいことができました。「5年、6年たっても、自分のこととして考えたい。忘れてはいけない」


このほか発表会では、「飯舘村の電力はすべて再生可能エネルギーでまかなうべきか」「村内の3小学校を統合するべきか」といったテーマについて、飯舘中の生徒たちが賛成と反対の立場からそれぞれ討論するディベートもしました。さらに、村民から聞き取ってまとめた村の郷土料理のレシピ集も披露。ジャガイモをみそであえた郷土料理「みそいびり」を、福島市内の仮設住宅の村民が調理し、生徒や来場者にふるまいました。

飯舘村の復興には何が最も大切か討論し、3色の紙を掲げて全員が自分の意見を示した。黄色が「お金」、青色が「人」、赤色が「気持ち」=福島市飯野町.JPG
写真説明:飯舘村の復興には何が最も大切か討論し、3色の紙を掲げて全員が自分の意見を示した。黄色が「お金」、青色が「人」、赤色が「気持ち」=福島市飯野町


原発事故によって引き離されたふるさとの飯舘村をどう学び、どう表現するか。創作劇も、ディベート発表も、レシピ本も、生徒たちのアイデアから生まれました。昨年4月から議論を積み重ねてきた成果です。そこには、ふるさとを思う気持ちと同時に、薄れる記憶への不安が垣間見えます。中学3年生の生徒は原発事故が起きた6年前、まだ小学校3年生でした。

すでに避難指示が解除された自治体を見ると、帰還するのは年配の方々が中心です。飯舘村も3月31日に大部分で避難指示が解除されますが、若い世代を含め、どれだけの村民が帰るのかは未知数です。そんな厳しい状況の中でも、ふるさと学習に取り組む生徒たちの姿が、村の復興に向けての「希望の種」のように感じられました。芽吹くのには時間がかかるかもしれません。それでも、着実に種はまかれています。


ヘッダー写真説明:飯舘村へ帰村するかどうか家族会議をする場面を演じる飯舘中学の生徒=福島市飯野町

*「被災地からのコラム」は今年から月1回(毎月10日)にご紹介していきます。

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