【東北女子のおすすめグルメ情報】仙台・カフェ パティーナ
こんにちは、優花子です。
最近はこの「制限なき居間」(ブログのこと)で紹介するお店がカフェばかりで、「おいおい、少しはカフェ以外のレストランや居酒屋のことも教えてくれと何回頼んだことか」とまさか思っているみなさん、それは真面目に申し訳ありません。
……はい、滝沢カレンさん風の文体にしてみました(勝手にごめんなさい)。テレビを見ない私は、呆れたことに、滝沢カレンさんをここ最近知ったのです。
彼女の独特の感性と言葉遣いに限りなく同質のものを感じ、Youtubeなどで彼女のグルメレポを視聴すると、なんて本当に同質であったことでしょう! 調理中の牛肉を赤い薔薇やレッドカーペットに例える、白い粉に異常にこだわるなど、同じとしか言いようがありません。「腹心の友よ」の台詞を心の中で発動してしまいますわ。
何より私たちの根本的な共通点は、中立的・常識的に飲食店の魅力をレポートするのではなく、そこの食べ物・飲み物を完全に自身の感性ぱたぱた(感性の翼を自在にはためかせること)の題材とし、独特な比喩の連発で人を戸惑わせ、お店のメッセージなどはガン無視で左様なら、とすることですよ。(カレンさんに対してはこれが私の最高の誉め言葉です。キャラを演じているのも知っていますが。)
つまり、ずっと書いていながら、この奇妙な記事の位置づけ方がようやくわかったのですよ、カレンさんを知ったことで。私の記事はカレンさんのグルメレポのごときもの。
というわけで、カフェの独特すぎる紹介(という名の自己中な文章書き)を今回も強引にいたしますわ。(ちなみに最近レストラン等ではなくカフェばかりになっているのは、感性をぱたぱたさせて外食を心から楽しめるところ、つまりノートとペンを何の気兼ねもなくテーブル上に置けるところ=カフェ、だからなのです。)
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金曜夕方、北四番丁での撮影の帰り道。定禅寺通りに向かっていると、晩翠通り沿いに何やら見過ごせない雰囲気のお店があった。「Cafe patina」と書いてある。カフェということは気軽に入っていいのだろう、と思って扉を開けると、こんな風景が広がっていた。
▲ドアを開けると魅惑の空間
「ご予約のお客様ですか」と麗人の美声が響いた。(おお、予約して来るところだったか)と私の内気ちゃんがうなだれる。その日はぎりぎり席が空いており、通していただいたのだけれど。金・土曜の夕方というのは生演奏があるため、特別に混み合い、予約が多いのだそうだ。
▲カウンターはこんな雰囲気
ボサノヴァやジャズと言えばいいのか?、馴染みの音楽が流れている。その日は上品なマダムや、紳士と華やかな女性の対、クラブで踊りそうな女性の組で賑わっていた。こんな大人のお店に一人でさらっと来られるようになりたい、と思う。
ひとりバブル、のごとくスパークリングワインとナポリタンを頼み、ナポリタンが来る。
女性が入ってくる。店内に背を向けてピアノの椅子に腰かける。
▲ピアノの上の薔薇
人に背を向け薔薇に向き合い、ピアノを弾く女は耽美である。音楽に耳を傾け、ひとり黙って召し上がっているマダムもなんて良いことか。
この情景に慣れたら、ワルツが流れていないとパスタを召し上がれない女になってしまいそう、という妄想をする。
――すると突然、あの美声の麗人、黒っぽいシックな服と低めのヒール靴で働いていたウェイトレスさんがマイクの前に立ち、歌いだした。衝撃。この人は歌手であった。生演奏の演じ手であった。
ウェイトレスと歌手の表裏一体――
『ララランド』のもじりを散りばめた前回の記事に、女優を目指してコーヒーショップで働く女性のことを書いたが、それと同じことである。普通に働いている人の、この中のどの人も女優、歌手でありうる。この夢よ!
歌唱される麗人の足の配置、手の配置の妙にもうっとりしながら、このお店はウェブベルマークの記事にするため再訪したい、と決める。
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というわけで再訪しました。今度は昼間です。強い日差し、強気に戯れる光と影が新鮮である。(記事内の写真はすべて昼間の再訪時に撮ったものです。)
確かにこのお店の外観には、中は高級な感じなのだろうとなぜか思わせるところがあり、私などが入ってよいのだろうかと一瞬躊躇う。でもそんなときは「パティーナ、パティーナム、パッティーナエ、パティーナエ、パティーナ」の呪文を唱えれば良いのかもしれない。
美声の麗人は、元劇団四季の女優さんである、ということを前回の来店後に調べた。それは納得でしょう、みなさん。私は自身のご機嫌を保つための手段、都合の悪いものは左様ならとする手段として美しい発声を心がけることがあるが、この方もそういう「強気の美声」なのかもしれない、とまさかそんなわけないのに妄想してしまう。
実は前回、メニュー表の一部に同質を感じて興奮していました。
あふれスパークリングワイン
「グラスからあふれさせてご提供します。」
手作りシフォンケーキ
「しっとり、ふわふわ。生クリームをたっぷりつけて。」
コラーゲンパン
「コラーゲンが練り込まれたコロンと可愛いパンです。2コ入り。」
ね、同質でしょう?
変なメニューの組み合わせをあえて注文し、それを復唱する店員さんの美声を店内に響かせたいという歪んだ欲求すら生まれてしまうが、そこはおとなしくイチ押しの「フレンチトーストランチ」とコーヒーを頼んでみた。
▲レトロなカップ。コーヒーはサイフォンで提供
▲三部作の演劇、とでも言いたくなるボリュームたっぷりフレンチトースト
▲一人は上に、一人は下に。バターとアイスのポージング
おお、これはすごいフレンチトーストであるわ!
食器にはレトロな洋食屋さんという雰囲気があり、お花をお化粧、白い粉……白い粉。お皿のお花模様にかかる白い粉。
さっそく頂くと、ふわふわたまごのおしあわせは勿論、デニッシュ生地を使用しているだけあって非常になめらかである。高級娼婦のごときフレンチトーストだと思う――上質でなめらかだが、後(会計/カロリー)がこわい。
三部作、第一部から第二部へうち続く涙のように、一枚目のトーストの上に乗ってるバターを二枚目にこぼしながら頂く。
三枚目の最後でにわかに動悸がしそうな甘さとなってしまった。コーヒーの酸味が相性抜群である。仮にコーヒーを食後にお願いしていたら、甘やかな恋愛詩を書いて「酸いも甘いも」の「酸い」や人生の苦味を知らずに終わる早熟の天才詩人の夭折となってしまうわ、と思った。
あるいは、欧州旅行10日分のお砂糖の摂取よ! お砂糖とはなんて魅惑で、なんて残酷なのか。
私は完全に敗北し、パンの塊を切り刻みちひさなかわいい塊として口に運ぶことをやめてしまった代わりに、皿上の風景を愛でることにいそしんだ。
お皿の隅で、生クリームに置かれた冷凍いちごとブルーベリーがしだいにうずもれ、残酷な金のナイフとフォークで突き刺されひとつづつ口唇に収容されると、やわらかき白きシルクのふわふわの上に残るは愛し合い、混じりあったばらとすみれの色移り。
いちごのほのかな赤とブルーベリーのほのかな紫、水彩画。お皿のお花、そしてちょうちょ!の色模様と素晴らしき親和性を見せる。
お皿の隅というのも、ステージの右端で忍びやかに行われる、バレエ『椿姫』におけるマルグリットとアルマンの情事のパ・ド・ドゥのようではないか!
このように、人との共食ではなく、ひとり脳内で華麗なステップを踏み、恍惚と死にたさ(躁鬱)を絶え間なく繰り返しながら、自身が自身に強いる街の上の緊張と恍惚で、ぐったり疲れて帰宅するのだ。
……悪くない。内向型人間にして、社交界倶楽部に観念で入部、街ちょうちょ(徘徊)を趣味とする人間には、こういうことが絶対必要なのだ。
▲壁の向こうには何がある?
なんと、壁の向こうはびっしりちょうちょなのである。おお、なんて私向きのお店!!!
ちょうちょとしてまた止まりにきたいと存じますわ――。
(玉田優花子)
今回ご紹介したお店の詳細データ
店名 カフェ パティーナ (Cafe patina)
住所 宮城県仙台市青葉区春日町7-33 HER'S晩翠通 1F
電話 022-395-4028
時間 11:00~21:00 ランチ営業、日曜営業