【東北女子のおすすめグルメ情報】仙台・bar SALOME(サロメ)
ご機嫌よう、小鳥遊ユカでございます。
新しいライターさんを迎え、わたくしの出番はお久しぶりですわね――これまで様々なお店をご紹介してきましたが、今回は最も妖しいお店のレポートですよ。
bar SALOME(サロメ)です。
サロメという名前からすでに妖しさ満点ですが、
▲はい、この雰囲気ですよ!
こんな赤いお店です。わたくしはもう、親愛なる女性を呼ぶかのように「サロメ」と呼んでいますので、ここでもそのように表記させて頂きますね。
サロメは今年2018年の3月にできたお店ですが、わたくしはもうハマりにハマってしまいました。サロメも女店主の九十九(ツクモ)さんも素晴らしいのです。
どのように素晴らしいのか……をむだに書こうとしてみる前に、ひとつ前置きを。
サロメはLGBT要素を含んだバーです。Lメインですが、どんなセクシャリティの方も歓迎とのこと。このようなバーって、東北ではこれまで休日しかやっていなかったのが、サロメは基本的に定休日の木曜を除き、平日も休日もやっている…! これは大袈裟でなく東北の誇りだと思います。
とはいえ、ツクモさんの元々のご友人が、純粋にツクモさんとお話したくていらっしゃることも多いそう。女性であれば基本的に入店可能、男性も女性とご一緒であれば大丈夫です。わたくしの友人のみなさまは、ユカの紹介で/ユカの記事を見て、と言って頂ければいいそうですよ。
それでは参りましょう!
大町というアート界隈にあるサロメですが、隠れ家なので看板はありません。この満月のようなランプが目印。4階を見上げ、点いていたら開いています。
▲純喫茶のフォントを真似て、紙を切り貼り手作りされた「サロメ」
いいですね、この文字列の見た目の可愛さ。わたくしはもう全く、BOXという文字を見てもサロメに見え、△〇×もサロメに見えます(△は「サ」ロメの「サ」ンカク、ということで……)。
そしてサロメという音の響きも、なんてことでしょう、魔術のように凄絶に美しいです。ささやきのごとき”SA”、口蓋を甘やかに叩く”LO”、そして「女(め)」に他ならない”ME”……この名前がつけられるまでの物語もあるそうですので、ご興味のある方はぜひツクモさんに聞いてみてくださいね。
……サロメまでの行き方の話に戻りましょう。
▲ビルの1階
このビアズリーのイラストを見つけたら、ビルが合っている証拠ですので、階段を4階まで上ります。どうかお気をつけて!
▲ヨハネの秀逸な使用法
可愛いグリーンの扉を開けたら、赤い空間です。
▲大きな絵が飾ってあります
ツクモさんは絵を描かれる方でもあり、店内に大小の絵がいくつかあります。
彼女の絵も、サロメも、彼女も――大雑把な言葉で言うなら、とても現代的なので、アンティークでクラシカルな趣味の方には「違う世界」に思えるかもしれません。しかし、彼女の絵(あるいはその着想源となった文学作品)の裏には、古典や伝統への軽やかでウィットに富んだ目配せがある。どこかキッチュな、雑然とした、とでも言うのでしょうか、可愛さを湛えるサロメの内装(あえて白く目立たせてあるコンセントやコード類の存在感がわたくしは好き)の中にも秩序があり、あちこちに古典的な美術・文学の一欠片が散りばめられている。
彼女と最初にお会いしたときは、この方はとても「アングラ」な「カルチャー」と「アート」の方だと思いました。ええ、ここで告白しますと、「この方に惹かれてわたくしはこれからアングラに染まるのだわ」というご気分を楽しんでいたこともありました――趣味もファッション。洋服のように気分で自在に変えて良いものですもの。けれども彼女が、映画、音楽、文学、カルチャーというより「文化」というニュアンスのほうも、とにかく様々な方面に造詣が深いことも知っていた。あんなに似ていないと思っていたのに、今ではとても似ていると思うことも多いのですけれど――ああ、わたくしはこれ以上何を書けばよいのでしょうか……
とにかく彼女は奇抜と常識を兼ね備えていて、とある敬愛する方が書かれていた「モラルある変わった人」という表現がとても分かる。不思議なのに、わたくしがこれまで出会った方の中でも本当に上品で丁寧でお優しいです。これはわたくしと似ていないところ。憧れ。
とにかくサロメには、懐の深い何者かを秘めた、物柔らかさ、優しさ、温かさがいつも満ちている。それはサロメの扉を最初に開けた日から感じました。オープンの日、仙台には、ご丁寧に嵐が来ていた。ちひさくも果敢なる赤いお店の開店に、大いなる天空さえもが戸惑い歓喜していたのでしょう。暴風雨を通り抜けてサロメに入った瞬間の、あの心地といったら……。そう、――そうね、別にこんな書かなくても、「居心地が良い」の一言で済むというのに……
はい、では気を取り直して、サロメでわたくしがよく座る場所、3箇所を写真でご紹介致します。
ちなみにこの記事は、いつもと違って正方形の写真でお送りしております。サロメからお借りした写真(トリミング:ユカ)と、これから連続して出て来ますが、半透明の枠がついたものはわたくしが撮影した写真です。
▲ダリの時計もさりげなくありますね
まずはカウンター。サロメのカウンターは、テーブル席のあるフロアに背を向ける形になっています。一人で来ていいのか躊躇っていた頃のわたくしに、ツクモさんは「テーブルから見ると、ひとりでカウンターに座ってるひとの後ろ姿っていうのはかっこいいものですよ」と仰いました。
バーというと、メニューを見るより店員さんとのやりとりでお酒を決めるイメージで緊張される方もいらっしゃるかもしれませんが、サロメには全席にメニューがあり、ゆっくり選ぶことができます。飲みやすいカクテルやノンアルコールも充実しておりますよ。
▲白ワインとお通しのフルーツ
この日はフルーツ盛りに白ブドウが入っていて「これが入ると宝石感ありますよね」と出して下さいました。……大いに同意します。
お酒は白ワインを頂くことが多いです。下手すれば一晩で白ワインorシャンパンなら1.5~2本飲めるわたくしは気をつけなければ……。
続いて、テーブル席ですが一人でも座りやすい窓際の一席。
▲ゆめかわいいピンクのフラミンゴ
このお席で頂いたのは、混ぜるのが勿体ないこちら……
▲「生血みたい」なアメリカン・レモネード
▲いちご、この美麗なカッティング!
時間があると、オーナーのしのぶさんが、フルーツを複雑なカットで出してくださるのです。しのぶさんは、鬼才デヴィッド・リンチの名を冠した松島のシネマカフェ cafe&bar LYNCH(リンチ)を経営されている方でもあり、サロメのお通しを監修されていて、これがまた美味しいのですよ。
お食事系のお通しのときもありました。
▲なめらかなキッシュとオリーブ
サロメは今のところ、食べ物はお通しのみでフードメニューを置いていないのですが、この「東北出張グルメ情報」にサロメの記事を書かせて頂いている理由は、このお通しがいつも間違いなく美味しいからなのです。フルーツのときもお食事系のときもおつまみ系のときも、選べるときもありますよ。
テーブル席でも、時々ツクモさんがお喋りに来て下さいます。跪いてだったり、近くの椅子にお座りになってだったり……。
彼女はいつも白いシャツやエプロンのシンプルな装いなのだけれど、こういう場面ではふと、美しく磨き上げられた靴に目がゆく。本当のファッションってこういうことでしょう……。かっこいいわと思うと同時に、自らを恥じる。
次は二人で行ったときなどによくご案内して頂く、奥の、大きな絵画の下のお席。
▲ガラスのテーブル、灰皿も凝ってますね
▲特別に調合して頂いたペルノーのカクテル
▲LYNCH特製のミニ餅ピザ
このミニ餅ピザ、お友達と「なまめかしいですね」「(半分に折ると)八つ橋みたいですね」「八つ橋と同じくセクシーですね」とときめきながら頂きましたよ。お餅のモチモチと半透明の皮がとても美しくセンシュアルでした。
同じ系統としては、チーズ餅春巻きでしょうか。他にも写真を撮ってないけれど美味しいお通しがいくつもあるのです……
例えばお豆腐のムース。洋風ですが白だしも効いていて、おしゃれながら心落ち着くお味でした。このムースは人気のようですね。
スモークされたナッツ。悪魔的なおつまみ。こちらは「マンチーフーズ」さんのものだと教えて頂きましたが。
骨付き肉のスープ(この名前も興奮する)。コトコト煮て一晩置いたというもので、とても柔らかい。お肉が可哀想と言ったところ、ユカさん、お肉にも慈悲を……とさらりと仰ったツクモさん(慈悲という言葉が日常会話で出てくるところがステキ)。
それからシーザーサラダ。レタスとベーコンが分けられて盛り付けされて「シーザーサラダです」と出て来たので、わたくしは内心興奮した。普通われわれはおとなしく混ぜられているシーザーサラダに慣れているが、見た目が違ってもこれらはシーザーサラダの材料つまりシーザーサラダです/果たしてシーザーサラダなのだろうか、といういわばアート/哲学/問いを目の前に出されたようで――というのは言い過ぎかもしれないが。
他にも店内には魅力的なテーブル席、コーナーがありますよ。
▲光の色がくるくる変わるオブジェの席
▲見上げると猫
サロメには大福くんという猫がいて、扉の向こうで鳴いているのを聞くとなんとももどかしく愛おしい気持ちになり、さすが猫とは古今東西、あらゆる芸術家と詩人のミューズだよと変に納得するのですが、たまにこうして扉のこちら側にお見えになり、君臨し、悠然と赤い部屋を統べていらっしゃることも!
▲トイレの中はこうなっています
内臓をイメージしたというトイレも必見です。
▲そしてわたくしのお気に入りのランプ
(仮にも)ライターがこれを言ったら元も子もないですが、サロメの魅力は語り尽くせません。本のことなんか……美術やモードなどの雑誌の棚もあるのですが、収まらずさりげなく窓辺に積まれた漫画や文庫本など……谷崎と三島、美学文芸誌『エステティーク』があった時点で、わたくしは同類を確信したものです。
▲通い詰めた結果(途中経過)
手書きして下さるスタンプもまた可愛い。
わたくしはサロメでたくさんの魅力的なお客様方に出会いました――女の人がたくさんいる時点で嬉しいですが、オシャレでアートに詳しい男性や、表現や美学がとても「信頼できる」(変な言葉ですがこう思ってしまう)世界レベルのポールダンサー、そして仲良くなって頂けて本当に嬉しかった、沈黙も魅力的な、中性的な美貌の――デヴィッド・ボウイと澁澤龍彦に似た――お方など。
でも、どなたかと楽しくお話させて頂いてあっという間に時間が過ぎた日でも、帰り際にはツクモさんが必ず一声かけて下さって――「ユカさんもうお食事は召し上がりましたか?」と言われ「そうですね、なんだか過食で……」とつい答えたときには「私もです」と返して下さった。おお、親愛なる読者の皆様、このそこはかとない救われた感、想像して頂けますか? この返答に見える彼女の寛大なるお優しさというか、分かります……?
記事がすでに長くなってしまっていますが、最後に。彼女の偉大さは、これを見て頂ければお分かりになると思います。
―――
仕事でいやなことがあったら
愚痴りに来たらいいし
愚痴るのが嫌いなひとは
相談にしたらいいし
泣いてもいいし下ネタばっかりでもいいし
寂しいなら居たらいいし
話したくないなら話さなくていいし
本読んで映画観たらいいし
それが何歳でも
男でも女でもどっちじゃなくても
何者でもどこの国でも
サロメは
…なんでもありというか
なんでも面白いなあと思います。
営業してて思うのですが
毎晩日替わりの映画作れてしまうんじゃ…?
と思います。
―――
ちょっととてつもない包容力と、不思議に救われる距離感ですよね。
日替わりの映画というのも……! 確かにわたくしは、他のお客様方と話していてもいなくても、サロメの中に一緒にいるということ自体を、そこでその日起こることを、全てのささやかな気配を密かに楽しんでいる。例えばどなたかが「ツクモちゃんも飲んで~」とフロアからカウンターの中に向かって仰っているのさえ、「ツクモ”ちゃん”」という新鮮な音が映画の音声のように響き――本当に、全てがその日そのときにしか起こらない貴重なワン・シーンなのです。
もう少しだけ転載します。
―――
しんどい日なら面白くしてみる。
面白いのがいやなら美しくもできます。
サロメが登場する映画を
皆さんの心の中につくってみて欲しいです。
―――
(以上、サロメのブログ https://ameblo.jp/barsalome/ より)
「恋文よりも香り高く」わたくしの胸を打った、この言葉たち……。
ぜひいつか、赤い空に顫える満月、サロメへご一緒致しましょう。
(小鳥遊ユカ/冒頭写真:衣装と撮影 Used clothing YEN様)
店舗情報
bar SALOME(サロメ)
Address: 〒980-0804 宮城県仙台市青葉区大町1-3-11 福原ビル4階
Tel: なし
Opening Hours: 平日・日・祝 19:00-1:00 / 金・土 19:00-2:00
Closed: 木曜(変動があり得ます)→Twitterを確認して下さい
Price: チャージ600円、ドリンク500円~
Twitter: @bar_salome